2023/08/23 14:23





電験受験者の皆様,試験お疲れさまでした!!
こちらでは,今期出題問題に関して専門家によるレビューを初投稿します♪

各出題問題に対する難易度なども含めて公開しますので,ぜひこ参考ください🐌🐌🐌
もし好評であれば,各問題の詳しい解説なども投稿する予定ですのでお楽しみに!

それではどうぞ〜‼︎(ちなみに今期の弊塾オリジナル予想問題からは,試験本番での類似問題が理論科目では”3問”,電力科目では”1問”,法規科目では”1問”出題される結果となりました◎)


【 理論科目 】

*問1(易しい):並行平板コンデンサの基本的な問題、E=V/d、Q=CV、D=εEがわかれば解ける。
*問2(易しい):導体による電界の遮蔽。電気力線が導体内部に入らないことが分かれば解ける。
*問3(易しい):磁気抵抗Rm=L/(μS)、nI=RmΦ がわかれば解ける。
*問4(易しい):導体の線に流れる電流間の電磁力、F=μI1I2/(2πr)の式を知っていれば解ける。
*問5(普通):重ね合わせの原理を適用すれば解けるが、少し面倒。
*問6(普通):重ね合わせの原理を適用し電流源のみの時と電圧源のみの時で解き、電流を合わせる。
*問7(易しい):抵抗の温度計数の意味がわかれば簡単に解ける。
*問8(普通):z=R+j(2πfLー1/(2πfC))で共振周波数より上か下かでインダクタンスが優勢かキャパシタンスが優勢かわかればすぐ解ける。
*問9(易しい):Xc=√2Rよりz=R+j√2R =R(1+j√2)なので力率はすぐ計算できる。
*問10(普通):コイルの両端に発生する電圧は電流値の傾きに比例するので、最も傾きが大きい2msの区間でLdI/(dt)を計算すれば出る。ただ電圧の絶対値なので傾きが負でも絶対値が大きいことが大事。
*問11(普通):フレミングの左手の法則を正の電荷が流れるp型半導体と負の電荷が流れるn型半導体できちんと考えられるかが大事。VH=RH BI/dは知らなくても(ア)、(イ)、(ウ)が合えば解ける。
*問12(易しい):ゼーベック効果を知っているかどうかで決まる。
*問13(難しい):コレクタ接地増幅回路についてこれまでほとんど出題されていない。またエミッタ接地のような回路図でまたわかりにくい。
*問14(難しい):電力量計による有効電力は、P=W1+W2なのだが、W2が負になる場合なのでどう考えるか戸惑う人がいると思われる。
*問15((a)普通、(b)普通):
 (a)単相回路の問題は優しい。
 (b)の三相平衡回路の時、Δ結線をY結線に変換して電流を求められるかだが、標準的問題。
*問16(普通):テブナンの定理を用いて等価回路が得られれば、解けるが、定電流源の扱いに慣れていない人も。
*問17((a)易しい、(b)難しい):
 (a)誘電体を積層したコンデンサの電界強度の求め方は簡単。
 (b)誘電体を横に並べた場合の静電エネルギーとの比較は、難しくはないが計算が煩雑。
*問18(易しい):変調度の定義を知っているかどうかだけ。復調回路は、変調波から高周波の搬送波を除去することが分かれば簡単。

*総評:極端に難しい問題は出題されず、難易度は例年と同じくらいの印象。   


【 電力科目 】

*問1(易しい):水車の比速度の定義について、基本的な知識で解ける。
*問2(易しい):コンバインドサイクル発電の基本的性質がわかっていれば解ける。
*問3(易しい):ボイラーの主要設備について理解していれば易しい
*問4(易しい):ウラン235の質量欠損によるエネルギーを重油の燃焼エネルギーで割れば解ける。
*問5(易しい):風力発電の出力は風速の三乗に比例することを理解していればすぐ解ける。
*問6(易しいか難しいか人による):高圧カットアウトやパッドマウント変圧器については電気設備の業務に携わる人には簡単かもしれないが、実務経験のない人にはわからない。
*問7(易しい):計器用変圧器、変流器の一般的知識で解ける。(エ)は難しいが、(ア)、(イ)、(ウ)の選択で求まる。
*問8(易しい):配電用機材の一般的な知識で解ける。
*問9(易しい):コロナ放電や多導体についての知識で解ける。
*問10(普通):表皮効果について理解していれば解ける。
*問11(普通):配電線路で直接接地は無い。22kV配電線は、非接地方式であることを知っていれば解ける。
*問12(普通):∆V=(PR+QX)/V_r  を理解していれば解ける。
*問13(普通):5000kVA定格で%Zを統一して、電圧降下が同じになるように両変圧器の電流比(皮相電力比)を決めれば求まる。
*問14(易しい):アモルファスとは非晶質のことで、結晶構造を有していないことを知っていれば解ける。
*問15(易しい):
 (a)1秒間に消費する石炭量と石炭の単位重さあたりの発熱量の積から総発熱量がわかり600MWで割れば解ける。
 (b) 24時間で消費する石炭の重さのうち75%が炭素の重量、その44/12倍が、二酸化炭素の重量。簡単な計算で解ける
*問16((a)易しい、(b)普通):
 (a) 10MVA定格で変圧器と電源の%Zを統一し、和せば求まる。
 (b) 10MVA基準での定格電流を求め、(a)で求めた%Zで割って100倍すれば事故電流が求まる。定格遮断電流は、その値以上を選ぶ。
*問17((a)普通、(b)難しい):
 (a) 三つの負荷電流を複素数で表して和した後、その絶対値を求める。
 (b) SA間の電圧降下を求めてからAB間の電圧降下を求め、B点の線間電圧を求める。AB間の電圧降下をB点の線間電圧で割って100倍すれば求まる。

*総評:難問はほとんどなく、例年より難易度は低かった印象。


【 機械科目 】

*問1(易しい):直流機に関する基本的な知識で解ける。
*問2(易しい):界磁に永久磁石を用いた直流電動機なので簡単に解ける。V-r_a I_a=K_v ϕN(逆起電力)の式に2つの条件を当てはめ、定格運転時の逆起電力を求めれば解ける。
*問3(易しい):三相誘導電動機の基本を理解していれば解ける。
*問4(易しい):トルクは、機械的出力÷回転角速度(T=P_k/ω)。ω=(2πf(1-s))/(p/2)=9.048 rad/sと求まる。よって T=P_k/ω=36000/9.048=397.89 Nm
*問5(易しい):短絡比が小さいとは同期リアクタンスが大きいことであり、電圧変動率は大きくなる。よって(3)が誤り。
*問6(普通だが計算が面倒):同期速度、極数から1巻線あたり誘導起電力の実効値を求める(E_eff=2π/√2 fΦ_m=2π/√2×N_s/60×p/2×Φ_m=26.66 V)。250巻で巻線係数が0.95であるので全巻線による誘導起電力の実効値は、 26.66×250×0.95=6332 V。線間電圧は√3倍で、10967 V。
*問7(普通):電動機と負荷のトルクの関係に関する問題。電動機を安定に動作させるには、加速時でも減速時でも回転速度が上昇した時負荷トルクの方が大きくなり、回転速度が減少した時電動機トルクの方が大きくなる点でなければならない。説明文の理解が面倒。
*問8(易しい):三相変圧器の基本的な問題。∆-Y結線とY-Y結線では一次側と二次側の位相変位が異なるため並行運転できない。
*問9(易しい):単相変圧器の基本的な問題。最大効率時の負荷率がα=√(P_i/P_c )=√(250/1000)=0.5。η=αP/(αP+P_i+α^2 P_c )=25000/(25000+250+250)×100 で解ける。
*問10(普通):IGBTについて理解していれば解けるが、その特性についての教材が少ない。
*問11(普通):減速比から負荷の回転速度n_L=143.75 〖min〗^(-1)が求める。電動機と負荷の(回転速度×トルク)の値が一致する。効率も考え軸トルクが求める(T_L=(1150×100×0.95)/(1150/8)=760 Nm)。P_L=ωT=(2π×n_L)/60×T =(2π×143.75)/60×760=11441 W より求まる。
*問12(易しい):光速の単位(ℓm)、照度の単位(ℓx)、光度の単位(cd)が分かれば光束発散度(ℓm/m^2)等の単位が分からなくても解ける。
*問13(普通):十分時間が経った後の電流値より、R=v/i=1/0.1=10 Ω。時定数よりτ=L/R=0.01、L= 0.01 ×10=0.1 H。v(t)=L di/dt+Ri。フェーザ表示にしてV=(jωL+R)I。I=V/(R+jωL)、G(jω)=I/V= 1/(R+jωL)=1/(10+j0.1ω)=0.1/(1+j0.01ω) と解ける。
*問14(易しい):1周目→A=10, B=2。二周目→A=12, B=5、3周目→A=17, B=26、四周目の A=43で終了する。 A=43, B=26
*問15(易しい):
 (a)一次側の線路容量と二次側の線路容量が等しいので3000×100=3300×I_2。直列巻線に流れる電流は二次側の出力電流I_2=(3000×100)/3300=90.909 A
 (b) 自己容量は、直列巻線の容量なので(V_h-V_l ) I_2= (3300-3000)×90.909=27272.7 W。
*問16(易しい):
 (a) R4年下期にも出た問題。負荷電流は(ア)、電源からの電流は(エ)
 (b) (4)のダイオードが導通することで得られる逆電圧でパワートランジスタは転流しない。
*問17(普通):
 (a) 熱伝導率=1/熱抵抗×壁の厚さ/壁の面積、 熱抵抗= 1/熱伝導率×壁の厚さ/壁の面積=1/1.6×0.3/2=0.09375 。
 (b) 熱量(J)="温度差" /熱抵抗。温度差=熱量×熱抵抗=100×0.09375=9.375、よって高温側の温度t_1=20+9.375=29.375 °C
*問18(易しい):
 (a) クロック周波数2.5GHzより1クロックの周期(サイクルタイム)は、T=1/( f)=1/(2.5×10^9 )=4.0×10^(-10) s=0.4 ns
 (b) CPI=4で1命令あたりの平均実行時間が0.02 μs=2×10^(-8)  s。1クロックの周期は2×10^(-8)÷4=5×10^(-9)  s、よって動作周波数は、f=1/(5×10^(-9) )=2×10^8  Hz=200 MHz

 *総評:基本的な問題が多く、例年より難易度は低かった印象。


【 法規科目 】

*問1(易しい):電気事業法第43条の (a) 第一項、 (b) 第四項、 (c) 第五項条文の通りで全て正しい。過去に出題されている。
*問2(難しい):電気関係報告規則第1条第五項(電気火災事故)、第六項(破損事故)、第八項(供給死傷事故)、第3条(事故報告)の第一項の条文がわかれば解けるが、これまでにあまり出題されていない条文。
*問3(易しい):電気設備技術基準第14条「過電流からの電線及び電気機械器具の保護対策」条文で、電気設備技術基準を読んでおけば解ける。
*問4(普通):電気設備技術基準の解釈第16条第5項の「太陽電池モジュールの絶縁性能」に関する条文で、過去に何度か出題されている。「最大使用電圧の1.5倍の直流電圧と1倍の交流電圧の組み合わせ、10分間加える」という文言はよく出て来るので覚えておきましょう。
*問5(易しい):電気設備基準第32条、「支持物の倒壊の防止」の条文で過去に出題されている。電線路の支持物は、「電線による引っ張り荷重や風速40m/秒の風圧荷重に耐えるように施設されている」という文言だけでも覚えておきましょう。
*問6(難しい):電気設備技術基準の解釈第125条第1項一、二、四、五、六の条文そのままである。過去にも出題されているが、細かい数字が覚えにくい。ちなみに不燃性の被覆と自消性のある難燃性の被覆では、不燃性の被覆の方が火に強くいずれかの地中電線が該当していれば良いが、自消性のある難燃性の被覆ではそれぞれ(両方)の地中電線が該当していなければならないというのは覚えておきましょう。
*問7(難しい):電気設備基準の解釈における分散型電源の連系時の施設要件。分散型電源に関する解釈の内容はよく出題される(H29年、R1年、R2年)のでしっかり勉強しておきましょう。(a)第226条 低圧連系時の施設要件、(b)第226条第2項と第227条第1項一の要約、(c)第228条 高圧連系時の施設要件 で複数の条文が一挙に出ているので難しい。
*問8(普通):電気設備基準第57条「配線の使用電線」の条文そのままで、過去に何度も出題されている。電気設備基準はその解釈に比べ量も多くないので良く覚えておきましょう。
*問9(大変難しい):電気設備基準の解釈143条の電路の対地電圧の制限に関する条文で、長文の問題で、(2)の間違いが対地電圧300Vを400Vと間違えているだけなので気がつくのは難しい。(1) 第1項文頭、(2) 第1項二、(3) 第1項三、 (4) 第1項四、(5) 第2項を正確に覚えておかないといけない。
*問10(普通):30分間の平均使用電力が300 kW未満になれば良い。9時20分からの使用電力をP [kW]とすれば、P×10+310×20<300×30。P<(300×30-310×20)÷10=280 kW。よって30 kW 低減しなければならない。その他の負荷を10 kW停止するので、残り20 kWをファンの停止で賄わねばならない。一台5.5kWであるので20÷5.5=3.64 台。よって4台停止しなければならない。
*問11(易しい):
 (a) A工場とB工場の設備(定格)容量は、400+700=1100kW。AとB工場の負荷曲線の和の最大需要電力は700kWなので、需要率は700/1100×100=63.6 %
 (b) 両工場の平均需要電力は、(700×12+500×6+600×6)/24=625 kW、負荷率=平均需要電力/最大需要電力×100であるので625/700×100=89.286 %
*問12(普通):
 (a) B種接地工事は、遮断時間が1秒を超え2秒以下の場合、接地抵抗値はR≤300/I_g であるので、 R≤300/5  =60 Ω。
 (b) テブナンの定理を用いて接地抵抗の両端に現れる電圧は、200/√3 V。低圧電路と大地の間のインピーダンスはz ̇=1/j3ωC" " であるのでR_Bに流れる電流は、I_B=200/√3∙1/(R_B+1/(j3ωC))。その大きさは、 200/√3∙1/√(R_B^2+〖1/(3ωC)〗^2 )= 200/√3∙1/√(10^2+〖1/((3×100π×1×10^(-7) ) )〗^2 )=200/√3∙1/10610=0.01088 A=10.88 mA
*問13(普通):
 (a)氷雪の多い地方のうち海岸地その他の低温季に最大風圧を生じる地方は、甲種風圧荷重と乙種風圧荷重のうち大きい方になる。甲種:980×電線外径=980×15×10^(-3)=14.7 N。乙種:490×(電線外径+2×6×10^(-3))=490×27×10^(-3)=13.23N よって答えは、14.7 N
 (b) 甲種風圧荷重≤乙種風圧荷重の条件。電線外径をDとすると、980 D ×10^(-3)≤490(D+12)×10^(-3) 、490D≤490×12、D≤12。∴12 mm以下
 
*総評:問2、問6、問7、問9は難問。その他の問題をミスなくしっかり解ければ合格点は取得可能。難易度は例年と同じくらいの印象。   


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